【音楽】名曲・名演セレクション その258 The Rapture / House of Jealous Lovers

 2003年作The Raptureの1st “ECHOES” の6曲目。これはシングル・エディットですね。

 この ‘House of Jealous Lovers’ は2000年代のロックシーンを語る上では非常に重要な楽曲です。まず第一に、この曲は'00年代に一大シーンとなったポストパンク・リバイバルやダンスパンク・ムーブメントの着火点となりました。そして第二に、この曲はプロデュースを手掛けたDFAというチームが注目されるきっかけとなりました。現在においても当時のシーンを象徴する楽曲として各音楽メディアから高い評価を受けています。The Raptureは1998年に米西海岸で結成されたバンドで、翌'99年New Yorkに移り、そこでプロデューサー・チームであるDFAと出会います。で2001年にEPを出した後2002年にシングルとしてリリースしたのが、この ‘House of Jealous Lovers’ です。12インチシングルというフォーマット選択にも表れている通り、DFAはこのシングルのプロデュースにあたりクラブ受けを意識して制作を進めました。例えばマスタリングに際してはテクノを参考にしながら低音域の調整を行ったといいますし、カウベル (後にDFAのトレードマーク的サウンドとなります) やハンドクラッピング、逆回転ハイハットなどのオーバーダブにもリズム面の強化という目的が見えます。しかしこの曲のイメージを決定づけてるのはやはりバンドの歌・演奏の狂騒感ですね。Gang of Fourのような切れ味鋭いカッティングにディレイを掛けたギターサウンドは時代を象徴するサウンドと言って良いかと思います (ただ有名過ぎて真似するギタリストもあまりいなかった印象)。またGt. / Vo. 担当のLuke Jennerによると、この曲の歌詞は a sense of "invincibility"、ある種の無敵感を表現したものとの事です。歌いっぷりも正にそんな感じですよね。

 あとこの曲に関して思い出すのが、噂だけが先行して一体どんな曲なんだろう?と想像をたくましくしていた当時の状況ですね。確か私がこの曲の事を初めて知ったのはRockin' on誌のディスクレビューの輸入盤の欄だったと思うんですけど、前述の通り12インチのリリースで、クラブに聴きに行くような度胸も無くレコードで聴くような洋楽好きの友人もいなかったんで聴けず、どんな曲か分からないけど何か凄いらしい、というのが当時持っていた印象です (後に本楽曲を収録してるCDコンピも出ました)。当時はADSLがあったらネット環境良い方で、YouTubeもまだ無い (2005年会社設立で、一般化したのはその数年後) し、その前に音楽リスナーに人気のあったMySpaceすらまだ無い (2003年サービス開始) という事で、ネットを通じで音楽に出会うというのがまだできなかったんですよ (まぁ違法なファイル共有ソフトはありましたけど)。なんで気になったアーティストがいたらネットで試しに聴いてみるなんてのはまだできなかった。その代わりに当時はCDショップに試聴機目当てで足繁く通ったんですけど、どこぞの試聴機で ‘House of Jealous Lovers’ を初めて聴いた時はやっと聴けたという喜びと噂に違わぬバキバキっぷりに興奮したのを何となく覚えてます。まぁ昔はそんな時代もありましたという事です。8/20追記:iTunes Music Storeについて触れるのを忘れてました。2003年4月サービス開始らしいです。 ‘House of Jealous Lovers’ の扱いがあったかどうか…ちょっと憶えてないですね。