【音楽】名曲・名演セレクション その226 Manic Street Preachers / Intravenous Agnostic

 お久しぶりの日曜定期更新で御座います。今回は先日デラックス盤の再発がリリースされたManic Street Preachers “Know Your Enemy” からの楽曲を取り上げます。私まだ再発盤聴けてないんですけど。何とか予算を捻出して後日買いたいと思ってます。

 

 Manic Street Preachersの6thアルバム “Know Your Enemy” の3曲目。再発デラックス盤ではDisc 2 “Solidarity” の1曲目。

 Manic Street Preachersは英Wales出身のバンド。1992年、1stアルバム “Generation Terrorists” リリース時のメンバーを御紹介します。

Gt. / Vo.:James Dean Bradfield

Ba:Nicky Wire

Dr:Sean Anthony Moore

Gt:Richey Edwards

 メンバー間で得意分野が結構明確に分かれているのがこのバンドの特徴で、NickyとRicheyは詩作に秀で、従兄弟同士であるJamesとSeanが作曲や演奏においてメインに貢献するというのが一つの典型象でした。The Clashなどパンクの影響を受けながら高度に知的武装したNickyとRIcheyの書く語感ゴリゴリの歌詞を、キャッチーなメロディーで無理くり聴かせるというのがこのバンドのストロングスタイルですね。「30曲入りの2枚組のデビューアルバムを発表し、世界中でナンバーワンにした後、解散する」と宣言しながら実現せずバンド活動続行を続け、UKチャートも着実に上げておりましたが、バンド史上最もヒリヒリした3rd “The Holy Bible” (これは大名盤) リリース後のアメリカツアー前夜、精神病を患い入院などしていたRIcheyが突然宿泊していたホテルから失踪、バンドは活動休止を余儀無くされます。正直演奏的にはRIcheyの貢献はあまり大きくなかったのですが、作詞やバンドを突き動かすアティチュードの形成における貢献、そして何より少年時代からつるんできた大事な友人を失ったというのがきっと残された面々にとってはショックだったのでないかと思います。六か月の活動休止後、バンドはRIcheyの家族の要望もありRIcheyをメンバーとして残し彼への印税の分配を続けながら活動再開、やや落ち着いた作品がブリットポップの時代に歓迎され、‘A Design for Life’、‘If You Tolerate This Your Children Will Be Next’ などのシングルが大ヒットを記録します。

 といった時期の後にリリースされたのが6thアルバム “Know Your Enemy” ですね。元々は作風の全く異なる2枚組のアルバムとしてのリリースを考えていたのですが、レーベルから拒否され1枚に統合、その結果として、バラエティ豊かな楽曲が並ぶ、悪く言えば取っ散らかったアルバムなのがまず特徴でした。そしてもう一つの特徴が、今回御紹介する ‘Intravenous Agnostic’ の様にバンドサウンドがエッジを取り戻したんですが、ただしとてもモダンな作風だった点です。リードギタリストであるJamesはGuns 'N' Rosesなどのファンでもあったのですが、Manicsのサウンドは独特のいなたさがあり、それがファンから愛されるところともなってました。という事で今作に対するファンの意見は、エッジを取り戻したことに対する歓迎、または4th、5thアルバムを好んでいた層からの落胆、またManicsが「当世風」のバンドサウンドになった事への困惑など、様々な感想が当時あったようにうっすら記憶しております。ですが、落ち着いてまっさらな耳で評価すればとても良い作品だと思うんですよね。カッコいいし、泣かせるし、聴き応えある。という風にManicsあと聴きで確か初めて聴いたManicsのアルバムがこの “Know Your Enemy” だった私は思ってるんですが、21年後皆がどう思ってるのかはちょっと調べてみたけど分かりませんでした。どうですかね。まぁわざわざ楽曲分割して出し直すって事は、バンドはこの作品には満足してなかったのかもしれませんね。私も後日、デラックス盤の異なる楽曲の並びで聴くのが楽しみです。

 なおRIcheyですが、消息が不明なまま2008年に正式に死亡宣告 (ある人が行方不明の状態が長く続くと、もうその人は死亡したとみなせるという民法上の制度です。日本でもあります。米澤穂信の『氷菓』を読んだ、アニメ観た事ある人は思い出されよ) が行われ、その後バンドはRIcheyが残していた歌詞を全面的に使ったアルバム “Journal for Plague Lovers” をリリースしています。死亡宣告が行われるまで歌詞は大事に取っておいたんでしょうね。どこまでも律儀なヤツらです。