【音楽】名曲・名演セレクション その243 コトリンゴ / 悲しくてやりきれない

 コトリンゴによるカバー楽曲集第一弾 “picnic album 1” 収録。映画『この世界の片隅にOSTにも異なるアレンジのカバーが収録されています。

 コトリンゴは日本の音楽家。芸名の由来は、自身の好きな小鳥+作曲に使用していたAppleMacより。幼少期よりピアノ・作曲活動に親しみ、神戸の甲陽音楽院を卒業後、特別奨学金を得てバークリー音楽大学のジャズ作編曲科 / ピアノ演奏科専攻に入学。同院を2003年に卒業後、坂本龍一のラジオ番組『RADIO SAKAMOTO』 (J-WAVE) のオーディション・コーナーに送った楽曲が坂本の目に留まりオンエアされた事をきっかけに、2006年デビュー。以来、自身のオリジナル作品とともに劇伴音楽も多数手掛けており、特に2016年発表の映画『この世界の片隅に』のサウンドトラックは、日本アカデミー賞優秀音楽賞など多くの賞を受けています。専門的な音楽教育の素地を活かした、外注仕事などで発揮される引き出しの広さと共に、柔らかな声質を活かしたシンガーとしても魅力的なのがこの方の強みかなと思います。

 でさて、‘悲しくてやりきれない’ です。原曲はザ・フォーク・クルセイダーズの作品。メンバーであった加藤和彦の作曲に、作詞は ‘リンゴの唄’ などで知られるサトウ ハチロー。何でも作曲はレコード会社の会長室に3時間閉じ込められて、2時間半遊んだ残りの30分で作ったものらしいです。まぁ如何にも加藤和彦という感じのエピソードですが。このコトリンゴのカバーは民謡 / フォーク的だったオリジナルから感情のコアのみを切り出し、それをモダンに美しくデコレートし直したような作品ですね。古の名曲の現代的なカバーとしては理想的な作品の一つでないかと思います。