【競馬】2022年、今年の凱旋門賞を占う

 という事でいよいよ今年の凱旋門賞が次の日曜日、日本時間23時05分発走で行われます。ウマ娘にも出てきてるんで、何となくどういうレースかはウマ娘経由の競馬初心者さんも分かってるとは思いますが、欧州クラシック路線 (2400m前後) におけるその年の最強馬決定戦的な位置づけのレースです。歴代優勝馬RibotSea-BirdDancing Brave、Enableなどなど錚々たるラインアップ。日本の競馬界も、競馬文化発祥の地である欧州の競馬に追いついた事を証明するために、1969年のスピードシンボリ以来数々の名馬が挑戦し、2着はこれまでに4回あり中には非常に惜しいレースもありましたが、残念ながら優勝は成し遂げておりません。なんですけど、今年はひょっとしたらチャンスかもしれません。

 今年の凱旋門賞は混戦模様となっております。抜けて強い馬がいないというのが一般的見解です。現在の欧州競馬でマイル~2000mにおいてクソ強いBaaeedという馬がおり、凱旋門賞への出走を検討していたのですが、やっぱり出走せず2000m路線の英チャンピオンSに向かう事が報道により明らかになってます。その他の凱旋門賞で有力と思われていた馬も、今年のクラシックレースを勝った3歳馬 (凱旋門賞は斤量的に3歳馬、とくに3歳牝馬に有利なレース条件だとされています) が次走で凡走したり、あるいは昨年の強豪馬が今年は低迷したりという風に、順調に今年来ている馬が少ないんですね。それに対して日本勢は今年も精鋭を送り込めたという事で、これは日本勢チャンスじゃね?となっている訳です。なんですが…

 こちらはParisの天気予報(1時間・今日明日・週間) - ウェザーニュースから拝借した今日9/26時点でのパリの今後の天気予報なんですが、パリは今日から土曜までずっとぐずついた空模様で、特に凱旋門賞の前日である土曜日は雨の可能性が高いようです。欧州の競馬場は日本の競馬場より水はけが悪いらしく、多少の雨ですぐズブズブになります。という事で、今年の凱旋門賞はひょっとしたら重馬場、最悪の場合不良馬場になります。ロンシャンの重馬場は日本では経験できないレベルの田んぼみたいな馬場でして、去年の凱旋門賞において、国内では重馬場を苦にしていなかったクロノジェネシスが、ロンシャンの重馬場を実に走りにくそうにしていたのを記憶されてる方も多いと思います。もしも馬場が悪くなるようだと、欧州勢では出走を取り止める陣営も出てくると思われますし、またレースにおいては重馬場適性が非常に重要になります。という事で日本勢にとっては今後の天気が非常に気になりますし、もし馬場が重くなるようであれば、未知の条件 (ディープボンドは去年の凱旋門賞を走ってますが) への適応力が問われる難しいレースになると思われます。

 とここまで概説をを述べたところで、以下は日本馬と欧州勢の有力馬を何頭かピックアップして御紹介したいと思います。長くなるんで畳みます。

 

タイトルホルダー | 競走馬データ - netkeiba.com

 現在の日本競馬のエースはタイトルホルダーでしょう。昨年父ドゥラメンテが故障で走れなかった菊花賞を制し、今年は怒涛の重賞3連勝。特に天皇賞 (春) とこの宝塚記念はいずれも驚愕のハイパフォーマンスでした。タイトルホルダーの良いところは、逃げて自分でペースを作る事も、他に逃げたい馬がいるならそっちを行かせて自分は番手に控える競馬もできる事ですね。武豊騎手がキタサンブラック凱旋門賞に挑戦してみたかったという風に以前仰られているんですが、タイトルホルダーはキタサンに近いタイプの競走馬かと思います。それとタイトルホルダーについては血統表の母父父に御注目。あのエルコンドルパサーを負かしたMontjeuの血が入ってます。恐らくタイトルホルダーのスタミナ、底力は母方の血から受け継いでいるのが大だと思うのですが、果してMontjeuから重馬場適性も受け継げているのか、気になるところです。騎手は横山和生。この前フランスまでレース騎乗のため行ってたようです。本番では物怖じせず、思い切った騎乗を見せて欲しい。

 

ドウデュース | 競走馬データ - netkeiba.com

 武豊騎手に凱旋門賞を勝たせるために馬主をしていると公言する、キーファーズの松島正昭オーナーにとって念願であっただろう、自身所有馬初の日本ダービーを制した3歳馬による凱旋門賞挑戦がこのドウデュースです。9月初めにフランス入りし、前哨戦として臨んだのが本番と同じコースを走るこのニエル賞。4着というのは不安の残る結果ではあるのですが、武豊騎手曰く、体感上前走より40kg近く体重が増えていたとの事で、それ聞いたらまぁしゃあないかなという感じではあります。友道康夫厩舎は2016年の日本ダービーマカヒキでも凱旋門賞に挑戦しており、その時はニエル賞1着→凱旋門賞14着という結果でした。前哨戦で勝てても本番が駄目ではしょうがない訳で、そのマカヒキの反省を活かしつつ、かつドウデュースの叩いて調子を上げていくタイプである事を考えつつの、ロンシャンを走る経験を一度積むという選択だったのかなと思います。報道ではニエル賞後調子を上げていると言われていますが、馬券ガチ勢の皆様はレース当日のパドックでの馬体に要注目です。あとこのドウデュースはできれば馬場が重くなってほしくない感じでしょうか。前走ニエル賞以外日本で渋った馬場の経験はありませんし、パワーより瞬発力、切れ味で勝負するタイプに見えますし、血統もアメリカンな色彩の強い血統表ですし。データ分析的にはハーツクライ産駒は決して重馬場が苦手では無いという情報もありますが。騎手は勿論、武豊。10回目の凱旋門賞でどのようにドウデュースをエスコートするか、注目です。

 

ディープボンド | 競走馬データ - netkeiba.com

 ディープボンドの前走は上で御紹介した宝塚記念 (4着) なんですけど、ここでは昨年の凱旋門賞を御紹介しておきます。という事で2年連続の凱旋門賞挑戦ですね。昨年はフォワ賞 (1着) を経ての本番でしたが、今年は直行になります。昨年、凱旋門賞の次走だった有馬記念でエフフォーリアの2着に入り、一皮剥けたかと思われたのですが、そこからも勝ちきれぬレースが続き。そのもどかしい感じがファンにはたまらないのかもしれないですが。父は2013年に凱旋門賞で4着のキズナ。自身も昨年のフォワ賞で勝っているように、ロンシャン適性は決して悪くないと思われます。ただ重くなった時にどうか…。騎手は川田将雅。今回が初騎乗になります。

 

ステイフーリッシュ | 競走馬データ - netkeiba.com

 日本勢最後に御紹介するのが現7歳のステイフーリッシュです。3歳時の京都新聞杯以来、重賞での勝利から遠ざかっていたのですが、今年初旬中東遠征したところ何と重賞を連勝。海外に連れて行こうと考えた矢作芳人調教師の慧眼には恐れ入るばかりです。で宝塚記念9着を挟んでの前走がこのフランスのGⅡであるドーヴィル大賞ですね。レース後の電話インタビューで矢作調教師は2着という結果に不満の残る感じだったと記憶してますが、そこまで悲観する内容ではないかなと思います。本番ではタイトルホルダーも前に行くと思いますが、その辺騎手のC・ルメールがどのように捌くのか、注目です。父はステイゴールド。ステゴの血統はやたら海外で強いと言われており、凱旋門賞においてもナカヤマフェスタオルフェーヴルのステゴ産駒2頭で2着を3回記録しております。という事でロンシャン適性も期待できそうですが、馬場が重くなった時にどうかは正直未知数な感じでしょうか。

 

ルクセンブルク | 競走馬データ - netkeiba.com

 欧州勢の御紹介に移ります。現在オッズ1番手となっているのが、名門Aidan O'brien厩舎所属の3歳牡馬Luxembourgです。2歳時にGⅠを勝ち将来を期待されていたのですが、英2000ギニー3着後に故障を発生しダービーを断念、復帰戦GⅢ勝利の後に挑んだのがこの愛チャンピオンSで、ここで今年のパリ大賞馬Onestoや仏ダービーエクリプスS勝ち馬であるVadeni、古豪MIshriffなどを倒して復活をアピール。勝負強さの光るレースでしたね。ここまで6戦5勝3着1回と高い安定性は評価ポイントですが、まだ2000mまでの距離しか走ってないのは懸念ポイントではあります。まぁ父は英愛ダービー馬でセントレジャーでも2着に入っているCamelotですから何とかなるのかもしれないし、それに陣営が英チャンピオンSでなくわざわざ凱旋門賞を選んだという事は、それなりに勝算がある (Baaeedと走るのを回避したのかもしれませんが) のではないかと思われます。重馬場ですが、これまでに2走して2勝 (いずれもGⅠ) しております。ただロンシャンはマジで田んぼになりますからね。とか言ったら基本どの馬でも懸念が残るんですけど。

 

アルピニスタ | 競走馬データ - netkeiba.com

 現在のオッズ2番手がこちらの5歳牝馬Alpinistaです。若かった頃はビッグタイトルと縁が無かったのですが、昨年8月からクラシックディスタンスのGⅠを怒涛の5連勝。前走は凱旋門賞のステップレースとしても注目されるこちらヨークシャー・オークスで、今年の英オークス馬Tuesdayを撃破し、凱旋門賞の有力馬に名乗りを上げた格好です。父はマイル~2000m路線で伝説的な強さを誇ったFrankel。このAlpinista含め産駒がクラシックディスタンスで大活躍しているのを見るに、Frankelもダービーとか凱旋門賞とか出てたら勝ってたんじゃね?という気がしないでもない。あと凱旋門賞は近年牝馬の活躍が目立っており、その点でも注目されます。

 

トルカータータッソ | 競走馬データ - netkeiba.com

 現在オッズでタイトルホルダーと並んで3番手タイなのが、昨年の凱旋門賞覇者、ドイツ馬のTorquator Tassoです。ドイツでGⅠを勝っていたものの昨年の凱旋門賞における前評判は低く、人気もブービーとかだったのですが、重馬場を味方につけ歴史的アップセットを達成。ドイツ馬の凱旋門賞勝利は3度目でした。その後ですが、今年の良馬場だったキングジョージで2着など、決して重馬場専用機では無いところを見せてきました。前走はドイツのGⅠバーデン大賞で2着ですね。直線で他馬と身体ぶつけそうになってヨレたりしてますし、決して悲観すべき内容ではないかなと思います。それよりも、上記の通りもし凱旋門賞の馬場が昨年に引き続き重くなるようであれば、昨年ロンシャンの重馬場に圧倒的適性を示したこの馬に要注目かと思います。父はドイツの種牡馬Adlerflug。独ダービー馬らしいけど、すみません、よく知らないです。血統的にはSadler's Wells系。

 

オネスト | 競走馬データ - netkeiba.com

 オッズ5番手がこちらのOnestoです。フランスの3歳馬で、前走はLuxenbourgの2着だった愛チャンピオンS。こちらではさらにその前走、凱旋門賞と同じコース条件で行われるパリ大賞を御紹介しております。7戦3勝 [3-2-0-2] とイマイチ安定感に欠けるのは気になるところですが、凱旋門賞本番と同じコースのGⅠで勝利歴があるというのは一つアドバンテージかなと思います。パリ大賞勝ち馬による凱旋門賞勝利は、1997年のPeintre Célèbre、2004年のBago (ただしこの2頭はパリ大賞が2000mだった時代)、2006年のRail Linkなどがおります。父はAlpinistaと同じくFrankel。母父Sea The StarsUrban Seaの3×3のクロスがあります。

 

アダイヤー | 競走馬データ - netkeiba.com

9/27追記:Adayarは凱旋門賞回避し、英チャンピオンSに向かうと決定したとの事です。

 最後に、もし出走してくるようなら要注意な馬を御紹介します。Adayarはゴドルフィンが所有する4歳馬。昨年の英ダービーキングジョージを連勝して臨んだ凱旋門賞では道中で先頭に立つチグハグな競馬もあり4着、そして中12日というなかなか無理筋なローテーションで臨んだ英チャンピオンSで5着、その後長期休養に入り、今年9/8にやっと復帰して臨んだ条件戦で御覧の通り楽勝。まぁ単なる条件戦ですからね。どこまでこの楽勝を真に受けて良いのかは微妙なところ。陣営はやたら強気ですけど…。次走に関しては馬場が良い状態を保つようであれば凱旋門賞、そうでなければ英チャンピオンSに向かうとの事。もしもあまり馬場が重くならずに出走してきて、出来が去年のピーク時を取り戻しているようであれば、間違い無く上位に食い込んでくるだけのポテンシャルがあると思いますが、その辺果たしてどうなのか。馬券ガチ勢の皆様はその辺難しいジャッジが求められそうです。こちらも父Frankel。

 

 今後も随時動向があると思いますが、私のtwitter、@mumeiken3renでもなるだけニュースの御紹介などしていきたいと思います。良かったらチェックしてみて下さい。