【音楽】名曲・名演セレクション その247 やなぎなぎ / 春擬き

 という事で、今回はそろそろアニメ放送10周年らしい、アニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の第2期OP曲を御紹介します。

 

 やなぎなぎの10thシングル。3rdアルバム “Follow My Tracks” 他収録。読めます?「はるもどき」と読みます。

 やなぎなぎは日本のSSW。中学で音楽を作り始め、ニコニコ動画など各種サイトに歌ってみた動画 (ガゼルという名義を使用) や自作曲を投稿。2008年にそれら活動からの引退を宣言。そしてsupercellにゲストボーカルとしてnagi名義で参加し、3枚のシングルと1枚のアルバムで歌唱を提供。特に1stシングルの ‘君の知らない物語’、先々週取り上げたアニメ『化物語』のEDテーマだった楽曲ですが、歌詞も含めて有名な楽曲でないかと思います。そして2012年にメジャーソロデビュー。現在までに6枚のオリジナルソロアルバムなどをリリースしています。ソロでは基本的に作詞はやなぎなぎ氏自身で、作曲は他の人に頼むのと自身で行うのと半々、といった感じです。音楽的なルーツとしてはエレクトロニカらしいのですが、supercellへの参加以降は意識してポップスやバンド音楽も聴くように努めているそうです。その成果かは分かりませんけど、アニメのOPやEDを歌われる事がとても多く、また最近では麻枝准とのコラボレーションで、『ヘブンバーンズレッド』の楽曲に多数歌唱参加されてます。あのTwitterで広告よく見るスマホゲーですね。面白いのか気になってはいました。

 でさて、楽曲 ‘春擬き’ です。前述の通り、アニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』のOP楽曲でした。あの曖昧で抽象的な原作小説をよくぞ読み解きそのエッセンスを提示した、という感じの歌詞ですね。特にサビの「こんなレプリカはいらない 本物と呼べるものだけでいい」という部分なんて、原作ファンには堪らないんでないでしょうか。まぁこういう風に作品を嚙み砕いして歌詞に落とし込んでくれるなら、そらアニメ制作者もOPやED楽曲を依頼したくなりますよね。作・編曲は北川勝利氏。バンドサウンド+流麗な弦楽器+エレクトロニカの要素もチラ見せという事で、ゴージャスなアレンジですね。やなぎなぎ氏の声と相まって、品の良さを感じさせるサウンドです。

 ついでに『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』について。『このライトノベルがすごい!』で殿堂入りもしている、2010年代のライトノベルを代表する作品です。当時よく言われていたのが「『俺ガイル』は文学」。ラノベ然とした分かりやすさからはかけ離れた、登場人物達が複雑な感情を持て余して思い悩む姿や、主人公、比企谷八幡アンチヒーローぶりが印象的な作品です。ウィトゲンシュタインという昔の哲学者がそれまでの哲学を批判して、「勝手な言葉の定義で語り得ない事を語ろうとしてるから、哲学の議論が紛糾するんだ」といった感じの主張を行っているんですが、正直『俺ガイル』という作品やその登場人物達にも言葉に溺れてるような印象を受けなくもない、つうのが私の意地悪な見方ではあります。がその一方で、見守っていたくなるようなキャラクター達の健気さを感じさせる作品でもあります。私は初読時既にオッサンでしたからアレですけど、『俺ガイル』と共に青春を送ったような方は色々と影響を受けたんでないですかね。ラノベは好きだけど読んだ事無い方、「ラノベなんて…」と思っている方、試しにどうですか。アニメも良い出来だったんでお勧めです。