【音楽】名曲・名演セレクション その106 The Velvet Underground / Pale Blue Eyes

 1月にLou Reed、2月にJohn Cale、そして今回The Velvet Undergroundと同じようなネタが続きますが、今度説明しますと書いたのをあまり放置したくなかった、できれば時間のある春休みの内に片付けておきたかったという事で御了承頂ければと思います。で選曲ですが、多分興味持ってバナナの1stは聴いた事ある(そしてよく分からないと思った)方も多いだろうと思ったので外しました。ノイジーな曲もVUを構成する大事な部分ではあるんですが、VUにはこういう穏やかな曲もあるよという事で。予め書いておくけど、今回も長くなりました。まぁ良ければお時間のある時にご一読下さい。

 

 という訳でThe Velvet Undergroundのセルフタイトルである3rdアルバムの4曲目。ちょっと前にスーパーデラックスエディションなるものも出てるみたいなので、興味のある方はCDjournal.comとかで情報調べてみて下さい。私は普通のCDしか持ってないのでそのスーパーデラックスがどんなかは知りません。ちょっと興味はあるんですけどね。

 The Velvet Undergroundは60年代半ば~70年代初頭のNYを拠点に活動したロックバンド。バンド名は当時刊行された性的倒錯に関する書籍のタイトルから。まずはメンバーを紹介しましょう。

Lou Reed Vo.  Gt.他

 バンドの中心的メンバー。シラキュース大学で詩作を学ぶと共にロックンロールを愛好する。バンド結成前は職業的ソングライター(って言葉が正しいのか分かりませんが。レコード会社に雇われてポップソングを作曲していたという事です)として働いた事もあり。性的にはバイセクシャル?(正直この辺よく分かりません)

John Cale Viola, Violin他

 英出身、幼少期からクラシック音楽を学んできた所謂音楽的神童。米に留学しLa Monte Youngに師事し音楽活動を行っている頃にLou Reedと出会ったのがバンド結成のきっかけ。

・Sterling Morrison Gt.他

 Louの大学の同級生。Louの誘いでバンド結成時から参加。正直地味なメンバーなんですが、意外と音楽的貢献は大きいのかもしれません。今回の曲然り。

・Maureen Tucker Dr.他

 バンド結成時のドラマーと交代で加入。バスドラムを手に持ったマレットで叩く、シンバルを殆ど使用しないなど独特なドラムスタイルがバンドの演奏に与えた影響は大きかったですね。3rdアルバムの最終曲「After Hours」ではヴォーカルも担当。

 バンドは活動を通じてAndy Warhol(とても雑に紹介すると、缶スープの絵を描いた人ですね)と知り合い、彼が主催するマルチメディアイベントに参加、彼のプロデュースでデビューアルバムを作る事になるのですが、その条件として加入を要請されたのが

Nico

 ドイツ出身のモデル。Bob Dylanの紹介でAndy Warholと出会い、彼のThe Factoryに出入りするようになる。英でも歌手デビューしてたらしく、多分元々音楽活動への意欲が高かったんでしょうね。

 という事で、The Velvet Underground & Nicoとして同名の1stアルバムを制作、発表。

Velvet Underground & Nico

Velvet Underground & Nico

 

 このバナナですね。このアルバムがどういうものだったのかを端的に表すのが、Brian Enoの「あのアルバムは三万枚しか売れなかったが、買った者は皆バンドを始めた」という言葉でしょうね。恐らく、発表当時は売れなかったけど後世に多大な影響を与えたアルバムとしては、トップクラスでしょう。

 バンドはAndy WarholNicoと袂を分かちアヴァンギャルドな演奏を極めた2ndアルバム『White Light/White Heat』を制作。しかしこの制作過程においてLouとJohnの関係が悪化し、結果Johnが脱退。その後釜として加入したのが

・Doug Yule Gt. Ba.他

 私が持ってるCDのライナーノーツの大鷹俊一氏の文章曰く「Louのクローンのような人物」。確かに「Candy Says」「Who Loves the Sun」での歌い方はかなりLouを意識してるのが伝わってきます。多分だけど、ギターがかなり上手い。

 という事でDougを含めた四人で制作したのが今回紹介する「Pale Blue Eyes」を含む3rdアルバムです。ノイジーアヴァンギャルドを極めた前作からの反動なのか、或いはLouなりに売れ線を狙ったのか知りませんが、オーソドックスなロックンロールまたは穏やかな楽曲が殆どという作品です。後世の我々はこれもLouの振れ幅の一環として受け入れられますけど、当時のファンは戸惑ったでしょうね。特に、今回はリンク貼りませんが、5曲目の「Jesus」とか、どう受け止めれば良いのか。私なんか今でもどう受け止めれば良いのかよく分かりません。

 という訳で長くなりました、楽曲の解説に移ります。まず曲を主導する柔らかな音のギターはSterling Morrisonですね。VUの楽曲って誰がリードギター弾いてるんだかよく分からない曲も多いんですが、多分Sterlingのプレイも少なからずあるんでしょうね。私もこの曲はよくギター練習しました。で気になるのは、Pale Blue Eyesの持ち主が誰なのかですね。Lou本人の発言によると、ヘイゼル色の瞳をした女性について歌ったもの、あるいは英語版wikiに紹介されている説によると大学時代の恋人だったShelley Albinに宛てたものとあるのですが、私はこの曲はNicoに宛てて歌ったんじゃないかと思ってるんですよね。何でも当時Lou、John、Nicoの間で三角関係が起こっていたらしいんですよ。The fact that you are marriedっていうのは単なる詩的表現。そしてNicoの瞳はキレイな青色です。まぁ分からないですけどね。Louがこういう事に関して正直に告白するようなタマとは思えないですし、あるいはLouの言葉通り、Pale Blueって方が嘘なのかもしれない。という訳で皆様も是非アルバムを聴き込んで皆様なりの真実を見つけて頂ければと思います。

 折角なので以降も書いておきましょうか。レコード会社移籍も挟んで、バンドは更に市場を意識したイケイケロックンロールを収録した4thアルバムを制作。しかしその制作過程でLouの精神状態が悪化してしまい、ツアーの途中で失踪かましてそのまま脱退。これで実質的にはバンドはほぼ終わりですね。その後Doug Yuleが主導してVU名義で発売したアルバムとかもあるんですが、正直興味無いので私も聴いてません。LouとJohnはバンド脱退後はそれぞれソロとして成功、SterlingとMaureenは一般人に戻ります。そして90年代初頭に一度だけ再結成。一方そこからハブられたDougはスタジオミュージシャンとして活動していたらしいです。Nicoについても触れないとですね。Nicoも脱退後はソロアーティストとして活動し、いくつかのアルバムを発表しています。残念ながら88年に事故のため亡くなってしまったんですよね。それが無ければ、ひょっとしたら90年代の再結成にも参加してたんじゃないかな。