【音楽】名曲・名演セレクション その248 Fontaines D.C. / Roy's Tune

 今回は先日の来日公演も好評だったみたいなFontaines D.C.です。

 

 Fontaines D.C.の1stアルバム “Dogrel” の6曲目。

 Fontaines D.C.アイルランドDublin出身、2017年結成の5人組ロックバンド。British and Irish Modern Music Instituteにて詩を愛好するという共通点をきっかけに結成。バンドとして初めて発表したのが詩集というから本物ですね。バンド名は映画『ゴッドファーザー』の登場人物、歌手で映画スターのJohnny Fontaneから取ってThe Fontainesと当初名乗っていたが、米国に同名のバンドがいると分かり、Dublin Cityの略、D.C.を付け加えたもの。現在までに3枚のアルバムを発表し、セールスを全英9位→2位→1位と順調に伸ばしてきており、批評面でも2ndアルバム “A Hero's Death” が2021年Grammy賞Best Rock Albumにノミネートされるなど成功を収めています。作品を聴いても決してセルアウトした訳では無い、寧ろ渋い作品作りを続けていると思うのですが、それで着実に支持基盤を拡大しているのは素晴らしいと思います。現在の若手バンドとしては筆頭級でしょうね。

 音楽性について。ジャンル的にはポストパンクバンドとされており、ベースが地の底を這うように低音を鳴らし、空いた広い帯域でギターがカッコよく響くというサウンドの基本構造は確かにポストパンク的であります。ヴォーカル、Grian ChattenのIan Curtisを想起させるようなバリトンヴォイスもそのイメージに拍車をかけるところです。とは言ってもその音楽性はポストパンク的サウンドを基盤に様々なジャンルを取り込んでおり、1stのガレージロック的な直情さから3rdのディープなサイケデリアへとその趣も変化してきております。もう一つ、彼らの作品に通底するポイントを挙げるとすれば、上記の音作りとも繋がるんですけど、フォーカスのクリアさというか、ある種の明瞭さを混沌とした音像においても感じられるというのは面白いところです。結構計算してパーツを組み立てていそうというか。こういう知性の感じさせ方もあるんだなつう感じですね。

 でさて、どの曲を選ぶのかは結構迷ったんですけど、結局私が好きな曲にしました。彼らのディスコグラフィーでは現状レアなタイプの曲なんですけど、こういう詩的な抒情性も彼らの魅力かと思います。Londonのバンドには書けなさそうな、良い意味でアイルランドっぽい楽曲じゃないでしょうか。