【音楽】名曲・名演セレクション その246 Richard Hell & The Voidoids / Blank Generation

 最近音楽のイントロについて考えていたのですが、今回は取りあえずイントロが良い曲、と考えてすぐ思い付いた曲を取り上げてみました。

 

 Richard Hell & The Voidoidsの1stアルバム “Blank Generation” の7曲目。

 Richard Hell & The Voidoidsはシンガー / ベーシストのRichard Hellを中心としたNYのパンク・ロックバンド。という事で以下はRichard Hellについて。Richard Hell、本名Richard Lester Meyerは1949年生まれ、Kentucky州出身。高校の時にTom Verlaine (本名Thomas Miller) と出会い、高校を中退。その後は詩人として活動していた (Hellという芸名はランボーの『地獄の季節』から取ったと言われています。Patti Smithランボーのファンでした) が、1972年、Tomに誘われBilly Ficcaと共にThe Neon Boysを結成。この時Hellは初めてベースを手にします。バンドは翌'73年に解散するもそのラインアップにRichard Lloydを加え、Televisionと名を変えて再び活動開始。TelevisionはCBGBでライブを重ね着実に成長するも、リーダー的ポジションだったTomとHellの間で音楽的志向における対立が生じ、'75年にHellは脱退。その後Hellは元New York DollsJohnny ThundersとThe Heart Breakersを結成するも、こちらもJohnnyとの間で確執が生じHellは脱退。という風に脱退を繰り返していたHellが自身が中心になれるバンドとして結成したのがThe Voidoidsです。Hell自身はその決して上手いとは言えないベースプレイに、「誰だって表現ができる」というメッセージを込めていたといいますが、The Voidoidsの集められたメンバー達は、Hellの表現したかった焦燥感、狂乱を的確に表現できる (プログレ的ヴィルトゥオーソとは違うも) 腕利きミュージシャン達が揃っていたかと思います。特に有名なのがリード・ギターのRobert Quineですね。禿頭で腹の出た弁護士 (の資格を持つ) でありながらパンクバンドでキレッキレのギターを弾く、キャラの立ちまくった人だったんですが、後にLou ReedMatthew Sweetとも活動を共にしている名ギタリストです。という事でHellの世界観をようやく表現できたThe Voidoidsの1stアルバム “Blank Generation” はリリース当時から高い評価を受け、現在でもパンク史を語る上で欠かせない大名盤とされているのですが、その後はHellがドラッグ中毒から抜け出せなくなると共にバンドが失速。正直イマイチな2ndアルバムと正直私もよく知らないソロアルバムを出した後、Hellは継続的な音楽活動から身を引き、以降は文筆業や俳優などをメインとして活動しています。時々音楽活動に引っ張り出されますが。

 でさて、楽曲 ‘Blank Generation’ です。この曲は1959年の楽曲 ‘The Beat Generation’ を翻案したものでして、その元ネタがこちらですね。

 元々Television在籍時代には既に歌詞が書けていて、The Heart Breakersのライブでも演奏していたそうです。Malcolm McLarenがライブで観て衝撃を受け、後のSex Pistolsにも影響を与えたとされる、パンクロックの精神性を象徴するような楽曲ですが、タイトルの ‘Blank’ をどう見るかでしょうね。「空虚さ、虚しさ」と捉えるか、それとも「どんな風にも塗り替えられる余白」と見るか。私の見立てでは、Hell自身退廃的な要素は持ちつつも表現の可能性のようなものは信じていたのかなと感じます。あとはイントロですね。ちょっと調べたらこのイントロをイマイチと書かれてる記事もあって、マジかよと思ったんですが。名曲感漂うゆったりした入りから性急に歌へとなだれ込む、名アレンジだと私は思います。The Voidoidsのもう一人のギタリストだったIvan Julianの名演ですね。