【音楽】Oceansizeの主要作品を解説する【discography】

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 Oceansizeというバンド、皆様ご存知でしょうか。恐らくたまたまこの記事を見た方の殆どは聞いた事も無いでしょう。彼らの活動中に国内版が発売されることはなかったですし、音楽雑誌で取り上げられる事も殆ど無かったので、日本国内での知名度は相当低いものと考えられます。一方キーワード検索Oceansizeでこの記事に辿り着いて下さった皆様、よくぞ来てくださいました。

 この記事では国内有数のOceansizeファンであると自任する私管理人が彼らの主要作品を解説する事で、彼らの刻んだ足跡を日本語で読める形で残しておきたいと思っております。あとできればOceansizeについて語り合える人と出会いたいなんて思惑もあり。

 

 

 では早速バンドの紹介から行きますが、英語版Wikipediaの彼らの記事が相当充実してますので、英語長文を苦にしない方はそちらにも目を通して頂ければと思います。

Oceansize - Wikipedia

 Oceansizeは1998年に結成の英国人五人組バンド。バンド名はJane's Addictionの楽曲Ocean sizeから。Salfordのカレッジで出会うものの、デビュー前には音楽都市として名高いManchesterに活動拠点を移し、以降解散までManchesterのバンドとして活動します。幾度かのメンバーチェンジを経て固まったデビュー時のラインアップは、

・Mike Vennart ヴォーカル、ギター

・Steve Durose ギター、バッキングコーラス

・Richard "Gambler" Ingram ギター、キーボード

・Jon Ellis ベース

・Mark Heron ドラム

 彼らの音楽性を説明するのに、確かMyspace(懐かしいですね)に彼らが影響を受けたバンドを列挙したバイオがあったと記憶していたので探してみると、まだありました。

oceansize (oceansizeband) on Myspace

 記事からバンド名を拾い上げて列挙してみると、Pink Floyd,Mogwai,The Verve(別の記事では初期のみと限定していました), Jane's Addiction, Tool, My Bloody Valentine, Swervedriver, Can, Tortoiseとなります。ジャンルでいうとプログレ、スペースロック、ポストロック、ファンクメタル、ヘヴィロック、シューゲイザーといった感じですね。特に初期の彼らはこれらバンドの影響を感じさせながらも、様々な要素を彼らの知性でミクスチャーさせる事で、オリジナリティーを獲得していたように思います。バンド名とか音楽ジャンルとか列挙されても良く分からない?要するにクソカッコいいという事です。

 楽曲が良いというのは勿論なんですが、私が思うOceansizeの魅力は主に以下の三点です。

①トリプルギターのアンサンブル

 トリプルギターというとRadioheadを想起する方も多いと思いますが、OceansizeはRadioheadと同じようにクリーントーンが美しく、そしてヘヴィ方面はRadioheadより激しく振り切れてます。その振り幅はMogwaiを想起して頂ければ良いかと。ただし、MogwaiよりOceansizeの方がよりヘヴィです。またRadiohead同様、様々なエフェクターを駆使したイマジネイティブなサウンドも楽しめます。

変拍子

 Oceansizeの楽曲は殆どが変拍子です。しかもかなり複雑なのがガンガン出てきます。Tricotなんかで変拍子に目覚めた方、このOceansizeもイケますよ。あとOceansizeはドラムが凄いです。ドラマーのMark Heronは現地のドラム雑誌に取り上げられる程の凄腕。

③歌詞

 OceansizeのフロントマンであるMike Vennart は上記のバンドの他Pavementなんかも好きらしいのですが、そのMikeによる歌詞もバンドの魅力の一つです。英語の歌詞の魅力を語るってのは語学力低い私には難しいのですが、そんな私の心にも残る詩のラインがアルバム中に何個も出てくるんですよね。あとMikeの書く歌詞は所々結構難しめの単語が出てきます。例えば当時文系大学生だった私は、catalystやamputeeといった単語をOceansizeの曲名で初めて知りました。

 

 という訳で作品解説に移ります。もう買えない作品も多いですが、参考にして頂くためにAmazonのリンクを貼っておきます。

A Very Still Movement E.P

A Very Still Movement E.P

 

  4曲収録のep。恐らく日本人がeBay等を使わずにCDショップで買えたものとしては、これが最も初期のものになるのではないかと思います。多分買ったの30人もいないと思いますが。ちなみに私はこの作品以降発売されたCD/DVDは全部持ってます

 Amazonに登録されてるのは2002年発売となってますが、他の情報源によると2001年発売で、Myspaceのバイオによると、Manchester's best unsigned bandとして彼らを知らしめた作品との事。#1、#3は後に1stアルバムに再録されます。録りはあまりキレイではないですが、当時既に楽曲のアレンジは完成していたことが分かります。#2は繋ぎのちょっとしたインストです。で、このepの最大の魅力は何といってもこのepでしか聴けない#4です。


  彼らにしてはシンプルなリズムですが、始まりの品の良いクリーントーン、そして急転直下のディストーション地獄と、まさにOceansizeの初期衝動の一曲と言って良いのではないでしょうか。

 

Relapse Ep

Relapse Ep

 

  2002年発売、3曲収録のep。特にフロントマンのMikeが大ファンらしいCardiacsというバンドのリーダーであるTim Smithがプロデュース。このepから大手インディーであるBeggars Banquet所属になります。この時に現在は超大物のBiffy Clyroとレーベルメイトになった事が、現在まで続く交流のきっかけになったのではないかと思います。

 #1、#3は後の1stアルバムに再録。大手インディーという事で、前作より音がかなりキレイになってます。アレンジも前作と同じくほぼ完成してますが、ただ#3、You wishのイントロがアルバムとは違う仕様になってます。このepの最大の魅力は、やはりこのepでしか聴けない表題曲、#2ですね。

 十分かけて海底から美しい太陽が輝く海上まで浮上するようにじりじりと高揚していく、ポストロック版Marquee Moonとでも形容したくなる至高の一曲です。ちなみにこの曲は彼らの今回取り上げてない初期epの収録曲、Ebbのリメイクです。しかしこれ、Amazonのレビューと全く同じような表現ですね。いやー誰がAmazonのレビュー書いたんでしょうか!

 

 その後彼らはいくつかのep、シングルを発売(今回は割愛します)し、いよいよ2003年1stアルバムをリリースします。 

Effloresce (Remastered)

Effloresce (Remastered)

 

 このアルバムタイトルの意味が分かる方は恐らくTOEICスコア900は堅いのではないでしょうか。 

 12曲収録のトータル76分。初回盤は四面開きのデジパック仕様です(私のはこれですがもうボロボロです)。epやシングルで既発の曲が多く、純粋な新曲の内#1、#5、#9は繋ぎのインスト物、歌物の新曲としては#12の一曲のみとなります。でも既発の曲が多いと言ってもとてもクリアに録音してくれてるので(彼らのようなバンドの場合キレイな録りでないとその魅力が十二分に伝わってきません)、特にA Very Still Movement epの曲なんかは全く新たな印象で楽しめると思います。またアルバム全体の流れもしっかり考えられ、既発の曲群もアルバムにきちんとなじんでますね。

 アルバムの特徴を挙げると、やはりまずは四曲の長尺曲ですね。長尺曲は以降彼らの特徴となっていきます。最初は面食らうかもしれませんが、10分程度の長さ、すぐ慣れます。また、彼らの作品の中ではこのアルバムが最もポストロック的なサウンドと言っていいのではないでしょうか。要するに分かりやすくキレイです。平均的な楽曲の長さが比較的短い(これでもそうなんです)のもあって、私がもし初めてOceansizeを聴く人に勧めるアルバムを一枚選ぶとしたら、この1stかなと思います。

 この曲、PVもありますが、尺を縮めるために曲がエディットされてて、そのエディットが全然駄目です。フルで聴きましょう。あとコーラスの歌詞がとても良いですね。和訳すると、「だけど僕は未来に怯えていて、現在の事に無知で、過去に対して用心深い」。一体どうしろと。

 この曲は、当時Mikeが付き合っていた性格がアレな彼女に向けて書いたらしいです。Perfectionist you falter, all guts no mind to alterのラインがとても好き。


 1stアルバムの中でも特にポストロック的な一曲ですね。この印象的なタイトルは当時見た雑誌の記事名から頂いたとの事。あと機材好きな向きのために書いておくと、フロントマンのMikeがこの動画で弾いてるストラトは子供の頃に手に入れたSquireで、リアのPUはDiMarzioの確かTone Zoneか何かです。

 ちなみに、Amazonのリンクを見て頂ければ分かる通り、このアルバムは2017年にリマスターされアナログとデジタルで再発されました。私もめったに聴かないアナログをわざわざ買いましたよ。その時一緒に買ったTシャツがやたらサイズが小さくて困ってます。

 

 1stアルバムである程度の批評的成功を得、またリリース後のツアーを無事に回った彼らは、2ndアルバムの前に再びepをリリースします、

Music for Nurses

Music for Nurses

 

  2004年リリース、5曲25分は全てアルバム未収録。ちなみにこのepのタイトルがMusic for Nursesで、後に発売される2ndアルバムに収録されてる楽曲のタイトルがMusic for a Nurseです。まぎらわしいですね。

 このepの特徴はまず全体を貫くダークなトーンですね。1stアルバムとは一味違うOceansizeが楽しめます。またこのepから、ドロップCチューニングが導入されました。説明しておくと、1stまでの彼らのギターは全音下げという、低い音が出るように弦を緩めたチューニングを使っていたのですが、今回新たに一番低い音が出る六弦をさらに緩める事で、ギターから出せる最低音を更新したという事です(多分1stではドロップC使ってないと思いますが、もし使ってたらすみません)。5曲25分という事で、一曲毎の長さは1stアルバム程ではないのですが、今作では#3~#5、トータル13分が組曲風に繋がっています。本当ようやるわ。

 まるでToolをMassive Attackがリミックスしたかのようだ、と当時評された一曲。

 これまでの彼らにはあまり無い疾走感のある楽曲。またこの曲ではMikeの激しいシャウトが聴けます。

 

 2ndアルバムに関連してシングルのリリースもあったのですが、これも割愛します。

Everyone Into Position

Everyone Into Position

 

  2005年リリース。今Wikipedia英語版のこのアルバムのページを見て、一曲目の前に隠しトラックがある事を初めて知りました。いや、昔知ってたっけな?とにかく聴いてみたいんだけど我が家の再生環境じゃ聴けない。隠しトラックも含めれば11曲69分です。ちなみにこのアルバムがフロントマンMikeにとって、Oceansizeのアルバムの中での一番のお気に入りとの事。

 彼らが影響を受けたバンドの中に、The Verve(初期限定)というのがありましたが、私が思うにこのアルバムは、彼らにとってのUrban Hymnsなのではないかと。当時の多発する宗教テロやイラク戦争、またプライベートにおけるMikeの父親の死(だからMusic for a Nurseらしい)といった物事を経て抱いた神への思いを、彼らなりの聖歌として昇華したのではないでしょうか。#2や#10では聖歌的なサウンドが奏でられる一方で、#1や#3は混沌とした時代を表象するかのようにカオスが音像として具現化されています。また、#8~#10の三曲は再び組曲風に繋がっています。今度はトータル21分。また書きます。本当ようやるわ。

 正直に書くと、私のアルバム発売当時、初めて聴いた時の第一印象は「あぁ、何か売れなさそうなサウンドの方に行っちゃったなぁ…」でした。でもこのアルバムの出来も素晴らしいですよ。1stでデビュー前に蓄えていた物をあらかた出し尽くしてしまった中で、良くこれだけの、ひょっとしたら1stアルバム以上のクオリティで仕上げてきたなと思います。という訳でこのアルバムもお勧めです。

 この楽曲もPVはエディットされてて駄目です。ライブ映像でイントロのアーアーってのを観客が合唱するのがなかなか熱いんですが、生憎良いライブ映像が見つかりませんでした。

 ドロップCチューニングが用いられた一曲。ちなみにこの曲に登場し、またアルバムタイトルであるEveryone into Positionというフレーズは、Mike曰く当時の世界を象徴する言葉であるとの事。

 この曲はまず歌詞が最高です(私はOceansizeの全楽曲の中でこの曲の歌詞が一番好きです)。そしてコーラスの9thコードのアルペジオが最高です。あと最後のコーラスで入ってくるギターがたまりません。ちなみにこの曲でのMikeのギターのチューニングは、六弦からCGDGBE、PavementStephen Malkmusから影響を受けたチューニングとの事。

 

  2ndアルバム発売後、彼らはBeggars Banquetから独のインディレーベルであるSuperball Musicに移籍。また2ndアルバムを最後にベースのJon Ellisが脱退、替わりのベースにサイドプロジェクトKongのメンバーであるSteven Hodsonが加入します。 

Frames (Bonus Dvd)

Frames (Bonus Dvd)

 

 2007年発売。ボーナストラック一曲と曲間の空白も含めて、9曲で78分。空白が30秒なんでそれを除いても、楽曲の平均長で過去最高を達成。

 このアルバムのサウンドの特徴としては、まずキーボードが大々的に導入されている事が挙げられます。主にギター担当のGambler(ステージのこちらから見て右側でSGタイプのギターを弾いている、ダンディーな人の事ですね)が担当してます。氏のキーボードは#1、#3、#4、#5、#6、#8、#9とこのアルバムの各所でフィーチャーされていますね。またこのアルバムは全体的に空間の余白を生かした、残響を聴かせる音の作りになってます。その事により得られたサウンドが、ダークというよりイービルといった趣。#1、#5、#7辺りは特にイービルな感じですね。その一方で前作の路線を引き継ぐ聖歌的なサウンドも#4、#8辺りで聴け、この聖と邪の交錯(実に厨二っぽい解説で申し訳ないんですが)がこのアルバムの魅力なのではないかと思います。

 Oceansizeのアルバムは1stから3rdまで全て傑作だと思うのですが、私はこの3rdが一番好きですね。んーなんでなんだろ、やっぱり特に優れた楽曲が揃っているからでしょうか。あと、様々な影響を咀嚼して、このアルバムでついにOceansizeというバンドの個性を真の意味で確立したってのは言えるかもしれません。

 あとこのアルバムは、アルバム全曲を無観客ライブで再現したFrames Liveと呼ばれるライブDVD付きで再発されています。当然私も持ってるんですが、聴き過ぎて上手く再生出来なくなってしまってるんですよね。恐らく現在ではDVD付きは入手困難でありましょうし、誰かがYoutubeにアップしてくれて実にありがたい限りです。


  中間のクリーントーンのパート、世界で最も品の良いギターパートではないでしょうか。にしてもなんでこんなクソカッコいい曲を書くバンドが売れなかったのか、さっぱり分かりませんね!


   Gamblerのキーボードがフィーチャーされた一曲。イントロパートの分数コードのアルペジオ、ギターで弾くのはなかなか辛いです。あと私的には、Mikeが楽曲終盤、最後の歌唱が終わった後の六弦をスライドする所がこの動画のエモいポイントです。


  イービルなサウンドのアルバム一曲目。「正気を保とうとするなんて止めちまえ」というラインが印象的。ちなみにこの楽曲名ですが、9/11の部分がマズいと判断されたらしくCDの楽曲名では伏せられています。Mike曰くテロとは関係が無いとの事ですが。

 

 2008年はバンド結成十周年という事で、それを記念した三夜連続のライブをManchesterのRoadhouseで行います。そしてそれを撮影し翌年リリースしたのがこの作品。

Feed to Feed

Feed to Feed

 

  2009年発売、CD4枚DVD3枚組、5000組限定発売のボックスセット。CDとDVDは同じライブを収録。

 このライブでは、一夜毎に既発のアルバムを一枚づつ完全再現が行われました。という訳で他では観られないレアな楽曲のライブ(まぁ彼らのオフィシャルなライブ映像作品はこれとFrames Liveしかないのですが)が楽しめます。そしてそれらに加えてアンコールではMusic for Nurses epの全楽曲、3rdアルバムFramesのボーナストラック、そしてレアなシングルB面曲(シングルRemember where you areのB面です)が披露されています。

 で、肝心の作品の出来ですが、かなり良い出来だと思います。アルバム全曲、バッチリ再現できています。ただ三日目のFramesだけは、いささかの疲れがみられる、そして何よりじっくり時間をかけて撮ったであろうFrames Liveとの比較にどうしてもなってしまう、という事で評価が前二日と比べれば下がるかな、とは思います。全然破綻した演奏とかではないんですけどね。あとは楽曲ですね。これだけで十分貴重ではあるんですが、どうせならRelapseとかSize of an oceanとかもやってくれれば、このボックスセットの価値も更に爆上がりだったんですが。

 それとこのボックスセットには、これまでの主要作の歌詞が載っています。これまで歌詞カードがあったのは2ndアルバムだけなんで、リスニング力が弱い、でも一緒に歌いたい私のような人間にはとても嬉しい仕様となっております。まぁ歌詞はググッたら大体見つかるかなとも思いますが。


  2ndアルバムの最終曲。この曲で既にGambler、キーボード弾いてますね。


  1stアルバムの一曲目。こういったインストもきちんと再現されます。映像付きの動画が見つからなかったのですが、映像ではこの曲でもGamblerがキーボードを弾いています。

 

 また同じく2009年、ボックスセットの発売一か月後に新機軸のepを発売。

Home & Minor - EP

Home & Minor - EP

 

 2009年発売、限定3000部。6曲で33分と、楽曲の平均長は短くなりましたね。#3のドローンがFeed to Feedのメニュー画面に用いられてますが、他は全曲アルバム未収録。

 これまでも過去作の二番煎じは決してしてこなかった彼らですが、今作では作風をガラッと変えてきました。今度のOceansizeは静かです。まず、ディストーションがほぼ使われていません(一か所だけ、味付け程度に控え目な使用があります)。また、トランペットやアコースティックピアノといった新たな楽器が採用されています。あと歌のメロディーも、これまでのメロディーはアンセミックなものだったと思うのですが、今作では器楽的と言えばいいんでしょうか、アンサンブルの一部として全体に馴染んでいます。これらの変化による総体的なイメージとしては、室内楽的という言葉がしっくりきますね。あと一部は上に書いた通り静かなドローン、アンビエント的です。結成十年を超え、ちょっとこれまで未挑戦の方面にトライしてみたかったのかな、というのが私の感想です。限定発売でもありますし、今後この方向性が本格的に継続されたわけでもありませんしね。他の作品とは違う静かなOceansizeを聴いてみたい方にはお勧めします。


  アコーティスティックピアノがフィーチャーされたインスト曲。リズムが凝ってますね。


  相変わらずこのように長尺曲もあり。鉄琴と木琴が使われてますかね?

 

 これまで長々と彼らの作品を解説してきましたが、いよいよ次の4thアルバムが最終作になります。

Self Preserved While Bodies Float Up

Self Preserved While Bodies Float Up

 

  2010年発売。スペシャルエディションのみに収録のボーナストラックも含めると11曲55分。タイトな路線はアルバムでも継続されています。相変わらず8分オーバーの長尺曲も二つありますが。#8にBiffy ClyroのSimon Neilがバックコーラスとして参加。

 正直当時の私は前作のepからあまり気に入ってなかったのですが、このアルバムには心底失望したことを覚えています。そして今改めてこの記事を書くために聴きなおしてみての感想も、『そこまで悪くはないのかもしれない、でもなぁ…』って感じですね。私が思うに、まず楽曲・アレンジに3rdの頃までの良さが無いかなと。Oceansizeの楽曲・アレンジの良さって、五人のメンバーでジャムしながらそれぞれの創意工夫を盛り込んでいく事により築かれる、意外性のある展開と豊かなアンサンブルにあったと思うのですが、このアルバムではその点に欠けているという印象です。何というか、アイデアが単線的。あとサウンドですね。ロック系のアルバムにおいてディストーションサウンドの質ってかなり大事だと思っているんですが(例えばRadioheadのPablo Honeyはこの点でかなり損していると思います)、このアルバムのディストーションは正直私にはつまらないです。特に#1なんて在り来たりの音過ぎて泣けてきます。まぁこういう音が好みの方もいらっしゃるのかなとは思いますが。どうやらこのアルバムを製作していた頃から、一部メンバーのドラッグ禍やらバンドを取り巻く環境がかなり悪化していたようですね。このアルバムの発売後のツアーにおいて、バンドはFeed to Feedの頃にはあれだけの完成度を誇っていたパフォーマンスを維持できなくなり、結果2011年に解散します。

 私は正直このアルバムはあまりお勧めできないです。1stから3rd、それにepも買って、せっかくなんでOceansizeのディスコグラフィー完成させようかなって人は、良ければ買ってみて下さい。ひょっとしたら気に入るかもしれないし。あと、このアルバムで初めてOceansizeを聴いた人も、できればOceansizeってバンドはこんなものかと見限る事無く、是非他のアルバムを聴いてみて欲しいなと思います。他のの方が断然良いから。


  この曲はアルバムの中でもマシな方です。

 この曲なんかは前epからの延長線上にあると言えますかね。後半は思いっきりディストーションが掛かってますが。ちなみに私もこのメンバーのサインが書かれたカード持ってます。


 恐らく4thアルバムを購入した人でも殆どの人達が聴いた事無いであろう、ボーナストラック。まぁ、ボーナストラックですね。

 

 

 最後にバンド解散後の活動についても簡単に触れておきます。各メンバーそれぞれ音楽活動を続けているようですが、やはり一番目立つのが元フロントマンのMike Vennartですね。彼はVennartとしてソロデビューしており、2ndアルバム、タイトルはTO CURE A BLIZZARD UPON A PLASTIC SEAがもうすぐ(2018年9月)にリリースされる予定です。

 この曲なんてかなりカッコいいので期待しております。それにしても元'Sizeのギター三名が勢揃いという事で、往年のファンは胸が熱くなりますね。

 どうやらVennartの2ndアルバムのフィジカルなCDやLPは、Amazonでも取り扱いが無いようです。なので現物に拘る方々は、Vennartのオンラインストアから直接購入しましょう。

Vennart pre-order catalogue

 それと、MikeとGamblerはBritish Theatreというユニットを組んで活動しています。

Music | British Theatre

 現在フィジカルで買えるアイテムは無いようですが、視聴やデジタルでの購入は上のリンクからできます。

 あとMikeは以前から仲の良かったBiffy Clyroのライブでのサポートギタリストも務めていますね。どうやらそれで来日もしてるようです(ギターに日本語のステッカーが新しく貼られてますね)。

 

 今後も元メンバーの活動等あればこのページを更新していきたいと思います。Oceansizeというバンド、未聴の方は是非一度耳を傾けてみて下さい。この記事に動画を貼った楽曲以外でも素晴らしい物が沢山ありますので。

 

2020/1/31追記:Vennartがニューシングルを発表しました。

kshn.hatenablog.com

 2020/3/20追記:Oceansize最期のライブ映像が公開されました。

kshn.hatenablog.com

 3/31追記:Oceansize ArchiveというYouTubeページができました。

kshn.hatenablog.com あと恐らく多くのファンの方が気になってるであろう再結成の可能性ですが、私は残念ながらかなり低そうだと見ています。一部メンバー間の人間関係が修復不可能なレベルで悪化しており、またメンバーを入れ替えての再結成にも否定的なようなので。